大切なもの【完結】
「怖く…?」


「うん。さっきさ、ベッドの上で彩香に触れてたら自制がきかなくなった。このまま…って思ったけど、我に返ったらできなくて。俺、初めてだしなんかうまくできる自信なんかないし。でも、一緒にいたらもう襲っちゃいそうでさ…俺、ほんと情けなくてごめん」



彩香に向かって頭を下げる。



「顔上げて、郁人」


「…彩香」


「一緒だよ。あたしだって自信なんかないもん。でも、郁人ならって思ってる」



彩香が俺を真剣に見てくれて、こう言ってくれて。
あぁ、俺はなにを不安に思ってたのかなって気持ちになる。
俺の中にあった塊が彩香の言葉一つで取り除けるんだ。



「ありがとう。で、俺は家に入っても大丈夫?」


「え?どういうこと?」


「んと、だいすきな彩香と2人きりでなにもしないって言い切れないってこと」



一度、自制がきかなくなったらもう抑えることなんてぇきない。
俺はさっきそれを思い知ったから逃げたんだ。

< 193 / 209 >

この作品をシェア

pagetop