大切なもの【完結】
「俺さ、四宮にマドレーヌあげてるのめっちゃ嫉妬したんだ」


「え?」



ケーキを切ってる彩香が俺に顔を向ける。



「一度も彩香の手作り食べたことなかったのに、中学んときよく食べてたとか言うし」


「あれは料理部だからだよ」


「わかってる。だから俺、中学の時からもっと積極的になってればよかったなって」



あれは、中学の時見ているだけだった自分が悪い。
積極的に彩香に話しかけて仲良くしていた四宮が優勢だったってわけ。



「あたしだって中学の頃から好きだったのに話しかけなかったから同罪だよ」


「罪なのかよ」



〝同罪だよ〟なんて言いながら可愛すぎる彩香を今すぐ抱きしめてやりたくなるけど、彩香はいまケーキを切り分けてる最中。 我慢我慢と自制をきかす。
いまはまだ大丈夫。耐えられる。



「マドレーヌよりも手がかかってるよ?」


「ん。嬉しい」



四宮にあげたただのお礼より、俺の誕生日に作ってくれるケーキの方が特別だなんてわかってる。

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