大切なもの【完結】

━━ピーッ


試合開始のホイッスルがなる。


とりあえず最初は逃げようかな。
とか考えてみる。


「…っ」


逃げ出した瞬間。


見えてしまったんだ。

同じ体育館にいる郁人とそして香を。
わかってる。
郁人は香を好きじゃないって。

でも、香は郁人が好きだから。
真っ黒いものが心を支配してるきがする。


「彩香頑張れよ」


損があたしの心の支配を少し緩くしてくれたのが翔だった。


コートのすぐ外で応援してくれてた。


いまはそれが救いだった。


「彩香ちゃんボールくる！」


さっきの子の言葉に反応をしたときには
既にボールはあたしに向かってきてた。

〝とらなきゃ〟


思ったのにそのボールはあたしの足めがけて飛んでくる。