大切なもの【完結】
「なんでわかるのかって?」


保健室の椅子にあたしを座らせる。


「...なんでお見通しなの」

「彩香の考えてることなんてわかるよ」


翔がふっと笑う。


「あれ、先生は」

「どっかいってるみたいだね」


翔は保健室の入れ物を開ける。


「そんなにあたしわかりやすいかな」

「さぁ、どうだろね」


入れ物から湿布とかを出しながらあたしを見る。

意味深な笑顔で。


「わかり易かったら困る...」


バレちゃうじゃん。
郁人への思いも全部。


「大丈夫だよ」


何もかもわかってるような顔の翔。


「なにが?」

「んーわかんないけどなんとなく?」


ヒヤッとした湿布の感触と一緒に翔の柔らかい声。

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