大切なもの【完結】
「...翔、待って」


あたしはトンっと翔を離す。


「ごめんな。OKもされてないのに」


ははって笑いながら包帯をまきなおす。


「...ごめん」

「いや。俺の方だよ。てかさ、いままで見てなかったなら少しは俺も意識してみてよ」

「...うん」


意識。
したことなかった。

でも
〝好き〟って言われたら。
意識が勝手に翔に集中するんだ。
勝手に意識してしまう。


「いまは...いまだけでいいから。俺でいっぱいにして」


あたしの頭を指さす。


「たしかにいまは翔でいっぱい」

「満足だわ」


なんて言って笑う。


「ちょっとだけ時間ちょうだい」

「あぁ。あ、でも、関係壊したくないからOKするとか考えんなよ」


あたしの頭を撫でる。


「...うん」


この人にはすべてお見通しで
嘘はつけないな。
そう確信した。

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