大切なもの【完結】
そういえばと思い返してみれば


ドッヂボールのすぐ近くで
翔は彩香を見てたよな。


彩香が怪我して
翔が運んで。

翔はヒーローじゃん。


そんなことを思ったら
保健室に向かう足取りが重くなる。


そんなときだった
保健室のほうからバタバタと足音が聞こえた。


こっちに向かってくる音。


...桜苗?


こっちに走ってくるのは泣きはらした顔の桜苗だった。


「桜苗!」


俺は走ってる桜苗の腕をつかむ。


「...郁人」


目に涙をいっぱい貯めて俺を見る。


「なしたんだよ」


俺は廊下の壁に桜苗をそっと座らせる。


「郁人はさ」


ゆっくりと桜苗が話し出す。


「俺?」


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