大切なもの【完結】

「...うん。全然ちっぽけなんかじゃない」

「いつも彩香のこと見てるのあたしわかってたよ」

「...よく気づいたな」

「最初少しだけ郁人のこと気になってたから」


そう微笑む。
涙はまだ止まってないけど。


「まじかよ」

「少しだけね。そのとき、彩香のことしか見てないのに気がついたの」


ニヤっと笑う桜苗。


「バレバレかよ」

「うん。彩香にはバレてないと思うけど」

「だろうな」

「ショックだったけど、翔に救われたの。あいつが癒してくれたの。だからあたし、翔を失いたくない」


桜苗がまた泣き出す。


「...泣くなよ」

「さっきの光景が頭からはなれなくて」

「...そうか」


俺の脳裏にもびっしりとこびりついてる。

翔が彩香に告白したって事実。