大切なもの【完結】

黒いもの─Ayaka

「行こうか」


翔があたしを立たせてくれる。


「...うん」

「歩ける?」

「翔のおかげで」


あたしは歩いて見せる。


「サッカーでのテーピングが役に立ったな」


翔が嬉しそうに笑う。


「ずいぶん嬉しそう」

「彩香の役に立てたから」

「あ、ありがとう」


翔の言葉に顔が赤くなるのがわかる。


「俺、本気だからね」


歩きだそうとするあたしを後ろから捕まえる。


「...わかってる」


ふわふわした気持ちになる。

郁人と翔は全然ちがう。
ふわふわした気分もなんだか種類が違う。

やっぱり郁人が好きだって
比べてしまうあたしは最低なのかな。


「ちょっとは考えてくれれば満足」


あたしの頭をなでる。

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