大切なもの【完結】
「なに泣かせてんだよ!」


廊下の曲がり角にさしかかかった時。
曲がった先のほうからそんな声が聞こえた。


「...いまのって」

「翼の声?」


翔と顔を見合わせる。


やっぱり翼だよね。


あたしたちは声の方向に走る。


「翼!?」


走ると翼が郁人の胸ぐらをつかんでいた。


「翼!なにやってんだよ!」


翔が二人の間に割って入る。


ふとその横を見ると廊下でしゃがんでいる桜苗。


「...桜苗?」


たしかに泣いていたのは事実のようで
泣きはらした目をしていた。


「桜苗、泣いてたの?」


あたしは桜苗の横にしゃがむ。


「彩香にはわかんないよ」


桜苗はぷいっと顔をあたしから背ける。

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