大切なもの【完結】
「で、郁人が桜苗のことを泣かせたの?」


翔がふたりを交互にみる。


「俺はなんもしてねぇよ」


郁人が立ち上がる。


「でも!俺が来た時に泣いてた!郁人の横で!」

「翼、落ち着けって」


翔が翼を止める。


「郁人のせいで泣いてたわけじゃないよ」


桜苗が郁人の制服の裾を引っ張る。


「俺は話を聞いてただけ。な?」


郁人が桜苗の頭を撫でる。


━━どくん


いままでにない感情が胸に広がる。


「うん。翼の勘違い」


桜苗が笑う。

桜苗はすっごくかわいいから。
郁人が好きなのは桜苗なのかもしれない。


「そうか、俺の早とちりか」


翼がへなへなと力が抜けたように座り込む。

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