大切なもの【完結】
「悠貴、いまでもたまに会うよ」

「そうなんだ」

「家にも行くし」

「じゃあ隣にきてるんだね」

「うん。彩香の家だーって表札みていつも思ってる」


来てることは知ってた。

でも、知らないふりしないと。
あたしがなぜ知ってるのかバレてしまいそうで怖かった


「お前ら結構近かったんだな」


翔がふって笑う。


「近いって?」

「いや、同じ中学なのに仲いい様子もなかったし、すげぇいろいろ遠かったんだと思ってた」

「...なんだそれ」


郁人がくしゃって笑顔で笑う。

あたしの好きな笑顔で。


この笑顔奪いたくないから。
だからこの思いは内緒。

ドキドキするのも内緒。


壊したくない関係だから。


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