大切なもの【完結】
「翼、あんなんだっけ」

「桜苗のこと好きすぎておかしくなったんじゃね?」


なんて言いながら笑う。


「...そうだね」

「んと、彩香」


翔が眉をひそめる。


「翔?」

「俺のこともう考えてもいないよな」

「...あ」


翔の言葉にはっとする。

保健室では翔でたくさんだったのに
郁人みたらぜんぶが郁人になっちゃう。

体中で郁人を好きなんだ。


「ごめん、やっぱり翔のこと好きにならない」


あたしは頭を下げる。


「...彩香」

「ほんとにごめんなさい。翔にたくさん助けられてるから翔のこと好きになろうかと思ったけど、やっぱり違う」

「わかってるよ。お前俺のことなんて見てないもんな。郁人だよな」


翔がにやってする。

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