大切なもの【完結】
「...翔」
「ずっと見てたんだ。それぐらいわかる」
「...そっか」
「気づかないふりしてごめん」
翔が頭を下げる。
「翔はなにもしてない」
「わかってたのに俺のとこにこさせようとした。ごめん。でも、これからもおれのこと頼ってほしい」
「翔、ありがとう」
「大丈夫。郁人は桜苗のこと好きじゃないと思うから」
あたしの頭を撫でる。
「香でもないから、彩香のこと好きかもね」
なんてあたしの顔をのぞき込む。
「...わかんないよ」
「俺としてはそのほうが諦めつくから早く付き合ってほしいわ」
なんて笑う。
「翔...ありがとう」
「このままじゃ諦められないからさ。さっさと付き合えよ」
肩をぽんっと叩かれる。