大切なもの【完結】
「それ、俺が届けるよ」


翔が俺に向かって手を差し出す。


「お前、もしかして桜苗の気持ち」

「さっきな。俺のこと見る目がな」


翔が下をむく。


「気づいたのか」

「うん。俺のことで泣いてたんだよな?」

「告白、聞いてたみたいだ」

「...そっか」


はぁっとため息をつく。


「みんながみんなうまくなんていかねぇよな」

「みんな両思いなんてあるわけない」


はじめから。
みんなが両思いだったら。
こんなに悩むこともないのに。

でも、悩むから
人は成長するのかもしれない。


「桜苗のこと...」


俺は翔の顔を見る。



「考えてやって」

「考えるよ。ちゃんと。いままで彩香しかみてなかったからな」


翔が笑う。

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