大切なもの【完結】
「彩香!」


彩香はさっきの場所にまだ立っていた。


「郁人?」


俺の姿を見て目を見開く。


「桜苗は...?」


遠慮がちに聞く。


「翔に任せた」

「翔?」

「今日な、翔の告白を桜苗が聞いたんだ」


俺はそこに座り込む。


「...え?」


予想外だったらしく彩香が俺を見る。


「郁人も知ってるの...?」

「桜苗が言ってたからな」

「そっか...」


俺も彩香も黙り込む。

でも、それでも心地よかったんだ。
二人でいる空気は。

はじめてだった。
こうして彩香とふたりになるのは。


━キーンコーンカーンコーン


チャイムがなる。


「あ、昼食い損ねた」

「あたしも」


俺と彩香は顔を見合わせて笑う。

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