大切なもの【完結】
「サッカー行かなきゃ」


俺は立ち上がる。


「ドッヂボールってどうなったんだろ」

「さぁ。でも彩香は出れないだろ」


彩香の足を指す。


「そうだね」

「彩香、サッカー応援きてよ」

「うん。かっこよかったらおごるんだもんね」


彩香が笑う。


「そうだ。かっこいいとこ見せなきゃな」


俺はガッツポーズをする。


「楽しみにしてる」


すごい。
ふたりでも普通に話すなんて。


「その包帯」

「え?」


彩香が首をかしげる。


「俺がやりたかった」


俺は彩香をそっとだきしめる。


「い、郁人?」


俺の腕の中で少し抵抗する彩香。

小さな彩香は俺の腕の中にすっぽりだった。

< 58 / 209 >

この作品をシェア

pagetop