大切なもの【完結】
「彩香ってずるいよね」


突然隣の香がそう呟く。


「え?」


なんでそんなことを言われるのかわかんない。


「翔に告白されたでしょ?」

「え?」


...なんで知ってるの?


「桜苗が言ってたよ」


桜苗...。


「桜苗は?」

「屋上で寝るって」

「...そっか」


あたしってずるいのかな。
ただ郁人が好きなだけなのに。


「寝れなかったから来た」


後ろから桜苗の声。


「桜苗」


後ろを向くと目がまだ赤い桜苗がいた。


「...桜苗、だいじょう…」

「彩香には心配されたくないから」


あたしの言葉を遮って桜苗が言う。


「...桜苗」


桜苗はあたしの姿を視界に入れることなく、香の隣に座る。

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