大切なもの【完結】
「被害者ヅラしないでよ」


香が立ち上がる。


「待って香」


桜苗も立ち上がる。


「もう、仲良くなんてできない」


香がそう言って背中を向ける。

その後ろ姿に桜苗がついていく。


「...なにこれ」


あたし、なにがいけなかったの?
なにかしたっけ。


─ピーッ


グラウンドに目をやるとゴールを揺らした瞬間だった。


...翔。


翔がシュートして入ったみたいでクラスメイトと喜んでいる。
もちろん郁人と。


「一人?」


あたしの隣に座る気配。


「...翼」

「さっきは恥ずかしいとこ見せたな」


翼が照れた顔を見せる。


「…ううん」

「元気ないけど、なんかあった?」


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