大切なもの【完結】
「ちょっといってくる!」


あたしはそれだけ言うと走りだした。


ふたりは試合をみていたはず。
でもここからはいなくなってた。

どこだろ。


走っていたら桜苗の後ろ姿があった。


「桜苗!」


あたしは桜苗の背中に向かって叫ぶ。


「...彩香」


桜苗はあたしを見て目を見開く。


「桜苗!あたしは翔のこと好きじゃないから!」


桜苗の肩を揺らす。


「...わかってるよ」

「それさ、結構傷つくなー」


なんて後ろからおどけたような声。


「翔」


あたしは翔の後に郁人がいないかキョロキョロするがいなかった。


「郁人ならまだあっちだよ」


グラウンドを指す。


「...そっか」

「あ。桜苗。ほら」


翔が桜苗の手にスマホを載せる。


「...あ、ありがとう」

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