大切なもの【完結】
「俺が勝手に彩香を好きになったから」


翔がつぶやく。


「...翔?」

「彩香は悪くないから」


翔が桜苗の手をとる。


「え?翔?」


桜苗の顔がどんどん赤くなっていく。


「いまもまだ彩香が好きだけど」

「わかってるよ」

「でも、俺のこと好きって思ってくれる子のこと考えたいって思ってるよ」

「...え」


彩香の目が驚きの目になる。


「彩香は見ての通り俺には興味ないし」


翔が苦笑い。


「だから、彩香のことは責めないで」

「彩香ごめん」


桜苗があたしに頭を下げる。


「いいの。そう思うのは当然だから」


香にも伝えたい。


「香探してくる!」

「たぶん、郁人見にグラウンドのはず」

「ありがと!」


あたしは2人に背中を向けて走り出す。

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