大切なもの【完結】
翔のことは友達として
大好きだ。


高校に入って、引っ込み思案なあたしを
みんなの輪の中に入れてくれた。


そこに郁人がいたから
すっごい感謝したなぁー。

それからずっとみんなで過ごしてきて
すっごく大切で。
それを自ら壊すなんてどうしてもできなくて。

あたしが郁人を好きなように
誰かも郁人のことを好きかもしれない。

そう思ったら、何も言えなかった。
臆病だから。


「俺だって負けねーよ」


珍しく、郁人が翔に対抗する。


「あれ、郁人が運動系でやる気になるの珍しいね」


香がきょとんとした顔をする。


「俺もおごってもらうから」


郁人があたしを見る。


「...かっこよく見せてくれたらね」


それだけ言って郁人から目をそらす。


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