大切なもの【完結】
「お母さーん!浴衣着せたげてー」



ヘアメイクが終わって居間にあたしを連れていく。



「彩香が昨日突然浴衣出しといてとか言うからびっくしたわよー」



お母さんがあたしの後ろにたつ。



「ごめんね。急に」


「いいけど、いままで浴衣なんて着て行ってなかったのにー」


「彩香彼氏できたんだって」



お姉ちゃんの顔が心なしかニヤニヤしてる。



「あら!もしかして郁人くん?」



お母さんの言葉にコクンと首を縦に振る。



「わぁ!よかったじゃない!」



お母さんには郁人のことを話していて。
でも、仲を壊したくないから郁人には言えないって言ってたんだよね。



「郁人くんいるときにわざわざ悠貴のとこ行ってたもんねー」



あたしに着物を着せながら話すお母さん。



「お母さんからのお裾分けとか言ってね…郁人のとこまで行く勇気はなかったけど、靴みて満足してた」



まさかこんな日がくるなんて思ってもいなかった。

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