大切なもの【完結】
「とりあえず降りる!」



ドアがあいたと同時にバタバタと走って降りる。
こんなとこで走っても電車こないと乗れないし意味はないのだけど。
どうしても郁人の元に早く行きたかった。



「郁人…」



電車がきたときに駅の時計を見るとすでに待ち合わせから15分が経っていた。

1駅5分だから、3駅で15分か。


30分以上遅れてしまうね。
しかもこんな時にスマホを充電し忘れるなんて、ほんとなにやってるんだろう。


郁人に早く会いたいのに。
郁人と手を繋ぎたいなとかいろいろ思う。

ふたりでみる花火はどんなかな。
郁人は今日どんな格好をしてるかな。
郁人は…


頭の中郁人のことでいっぱい。
彼氏彼女になっても好きが溢れて行く気がする。

止まることなんて知らなそうなこの想い。
どんどん大きくなっていく気がするんだ。



「早くあたしも会いたい」



電車の中にはお祭りに行くカップルがたくさんいて
あたしも家の近くで待ち合わせすればよかったと後悔する。

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