大切なもの【完結】
「そんな早すぎだろ」


昨日付き合ったばかりなのに飽きられたらなかなかきつい。



『冗談だっつーの。彩香はそんなすぐ飽きたりしないしな』



翔が彩香のことをわかってるような口調で言うのが悔しかった。



「わかってる」


『なら、俺んとこなんてくるわけねぇだろ。俺は振られたんだよ』


「ごめん」



自分でもなんで翔といるかもしれないって思ったのかわからない。
こう弱い自分にほんと嫌気がさす。



『まぁ、不安になるのは仕方ねーよな。待ち合わせ場所まちがってんじゃねぇ?』


「そうかも。スマホの電源切れたかもな」


『あ、桜苗きたからじゃあな』



そう告げられて電話が切られる。

お祭りは桜苗とだったんだ。
昨日の桜苗の涙を見てるから桜苗には幸せになって欲しい。

でも、桜苗と翔がもし付き合ったら翼はどうなるんだろうな。
自分のことでもない心配事が浮かぶ。


まぁ、なんとかなるか。


俺は彩香を探しに走り出した。

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