大切なもの【完結】
「あ!あそこ行こう!」



あたしは小高い丘になってるところを指さす。



「昔よくきてた?」


「うん!よくわかったね!」


「悠貴も言ってたから」



小さい頃よくここに悠貴ときていた。
うちの家族と悠貴の家族と。
中学生になった頃にはふたりでくるようになったっけ。



「もう少し大きいとおもってたなー」


「それは彩香が成長したんだろ?」



郁人が丘の上にある小さな丸太イスに座る。



「これも小さい!」



あたしも郁人と同じように座る。



「大人になっていくんだよね」



郁人があたしの頬に触れる。
こういう郁人はすごく色っぽくて、一気にまた心臓がうるさくなる。



「悠貴のこと好きだった?」


「え?」



郁人の質問に首を傾げる。


たしかに悠貴のことは好きだった。
でもあの頃は悠貴しか近くにいなかったし、他の人を好きになるような場面がなかったんだ。

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