大切なもの【完結】
「俺だって余裕なんかねぇよ」


「うそ、全然余裕だよ」


「ほら」



あたしの手を郁人の心臓あたりに持っていく。



「わかる?」


「これ、郁人の?」



触れた所から感じるのは、心臓の音の速さ。
すごい速さでとくんとくんいってる。



「俺だってずっとドキドキしてる」


「…郁人」


「こんなにずっと好きな彩香といてドキドキしないわけがない」



郁人の言葉に更にあたしの心臓も速くなる。
さっきまでも速かったのに。



「郁人がキスもうまいし…」


「うまいとかないよ。したいから…」


「あたしだけこんな余裕ないのかなって思ってた」



キスってこんなにもなにも考えられなくなるものだとは思わなかった。
チュッとして終わりだとばかり思ってた。



「ごめんな。俺が止めらんなかったから」



あたしの頭を撫でる。



「ううん。こんなの初めてでどうしたらいいかわからなかっただけ」


「俺も全部はじめてだらけだから。これからふたりでたくさんの初めてを作っていこう」



郁人の言葉に嬉しくなって思いっきり頷く。



こらからふたりでたくさんの思い出をつくって
そしていつか思い出話をするんだ。


これからもずっと一緒だよ。


─初デート Fin─

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