寄生虫
なんだか今日の克哉は会話がしにくい。


いつもなら雰囲気で伝わる事もあるのに、今日に限ってそれができない。


「無理しすぎなんじゃないかな?」


あたしの代わりに真尋がそう言った。


「無理? してないけど?」


それでもキョトンとした表情を浮かべている克哉。


「1人で倒れるまで練習するなんて、無理してるようにしか見えないよ?」


あたしがそう言うと、克哉はばつが悪そうに頭をかいた。


「あれはさずがにやりすぎた。それが心配で今日はここへ呼んだのか? それだったら、謝るよ」


克哉はそう言い、あたしと真尋へ向けて頭を下げて来た。


「ちょと、やめてよ」


あたしは慌てて克哉を止めた。


倒れたことを誤ってもらうために呼んだわけじゃない。


克哉がこんなにも簡単に頭を下げるなんて、やっぱり何か変だ。


「ねぇ……本当に克哉なんだよね?」


真尋が声のトーンを低くしてそう言った。


「は?」


克哉は首を傾げて真尋を見る。


その1つ1つの仕草さえ、どこか克哉らしくないと感じられてしまう。
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