寄生虫
あたしは今日そんな家事を頼まれた事をすっかり忘れてしまっていたからだ。


「あたしは、お母さんにもお父さんにも似てないね」


仕事をしっかりとこなすことも、家事を毎日続けることも、あたしにはできそうにない。


高校を卒業してからの事も、まだ何も考えていない。


「似てるわよ」


薬を塗り終えたお母さんがそう言った。


「目元はお父さん似、口元はお母さん似」


「そうじゃなくて……」


「そういう風に、性格だってきっとそれぞれに似ている部分があるわよ。だから、焦らずに自分のペースでいればいいの。お母さんはサナギとバラを比較なんてしないから」


普段から考えている劣等感を見透かされていたようで、あたしはドキッとしてお母さんを見た。


お母さんは相変わらず笑顔のままだ。


……やっぱり、あたしはそんなお母さんにもなれそうにはないなぁ。


ぼんやりと、そんな事を考えたのだった。
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