寄生虫
☆☆☆

家から一番近い病院は車で5分以内の場所にあった。


院内に足を踏み入れると消毒液や薬の香りが充満している。


それでも皮膚科のため、どんよりとした暗い雰囲気はなかった。


スリッパもちゃんと消毒されているものが用意されていて、あたしは安心してそれを使う事ができた。


「予約は入れてないけれど、これならすぐに順番が回ってきそうね」


「そうだね」


大きなテレビが設置されている待合室には、数人のお年寄りが座っているだけだった。


受付をすませて簡単な問診票を書いて、一番後ろのソファに座った。


テレビでは興味のない相撲番組が流れていて、お年寄りたちは熱心にそれを眺めていた。


そんな光景をぼんやり見ながら、あたしは昨日のテレビ番組を思い出していた。


色々な寄生虫がテレビ画面に出てきていたのを思い出す。


眠りにつきながら耳だけで聞いた内容は一体なんだったっけ?


たしか、人間に寄生している虫もいるとかっていう内容だったと思うけれど、ハッキリとは思い出せなかった。


夢と現実の間で見た内容は頭には入らず、すり抜けてしまったようだ。
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