寄生虫
ストレス発散
自転車をこいで街の競技場へ向かう中、あたしはバラの事なんてすっかり忘れてしまっていた。


風を感じながら走るのはとても清々しくて心地いい。


嫌なことも全部忘れられそうだった。


15分ほど自転車をこいで競技場に到着すると、あたしの額にはうっすらと汗が滲んでいた。


日差しはそんなに強くないが、急いで来たからだった。


自販機でスポーツドリンクを買い、客席へと向かう。


コンクリートの階段を上ると視界は開けて、楕円形のスタジアムが現れた。


戸町高校サッカー部のユニフォームを着た生徒たちと、対戦相手の選手たちがコート内を走り回っている。


「サナギ!」


声をかけられてふりむくと、すぐ近くに真尋が座っていた。


「真尋、試合はどう?」


「今の所戸町が2点入れてる。相手はまだ0点だからこのままいければ勝てるよ」


真尋が嬉しそうに言う隣に、あたしは腰を下ろした。


「そっか。戸町は強いからね」


「うん。でも、今日の練習相手も強い事で有名なんだよ」


「そうなんだ?」


そう聞くと、真尋は無言で頷いた。


すでに試合に見入ってしまっている。


サッカーの事は正直よくわからなかったが、京介の姿を見つけることはすぐにできた。
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