寄生虫
リビングから聞こえて来たバラの声にそう返事をしてあたしは自室へと戻った。


まだ完全には乾いていないワックスの上を歩き、スマホを取り出す。


そして、京介にメッセージを入れた。


《今日、暇なら遊びに行かない?》


そんな、他愛もない内容のメッセージだったけれど今日のあたしは心臓がドクドクと跳ねていた。


京介からの返事を待つ間髪を乾かし、日焼け止めを塗った。


《いいよ。誰呼ぶ?》


そんな返事が来てあたしは軽く息を吸い込んだ。


《今日は、2人で》


少し意味がありそうな雰囲気を交えて、あたしはそう返事をした。


あたしと2人きりが嫌なら京介からの返事は来ないだろう。


あたしは昨日買ったばかりの服をベッドの上に出して、京介からの返事を待った。


京介からの返事を待つ時間はたった数分だったと思うけれど、まるで何時間も経ったようにとてるもなく長い時間に感じられた。


《いいよ。2人で遊ぶの久しぶりだな》

そんな内容に一気に頬の筋肉が緩んでいくのがわかった。


「やった!!」


思わずそう言い、ガッツポーズをとる。


1つの事がうまく行けば、それ以外のこともすべて好転してくるように感じられる。


あたしはスマホをギュっと胸に抱きしめて、小躍りしたくなる気持ちを抑え込んだ。
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