寄生虫
「化粧なんてまだ早いだろう……」


お父さんは複雑そうな表情を浮かべて愚痴る。


そんな横で、あたしは手鏡を広げて口紅を塗った。


リップクリームくらいしかつけたことがないから、なんだか緊張してしまう。


「いいじゃん。その色あたしよりよく似合ってるよ」


「ほんと?」


「うん。とびきり可愛い。だから頑張っておいで」


バラにトンッと背中を押されてあたしはリビングを出た。


「頑張るって一体何をだ」


お父さんの心配そうな声を後ろに聞きながらあたしは家を出たのだった。
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