寄生虫
行先を決めないでのんびりと歩くのは心地いい。


時間も沢山あるし、こんな時は互いの話が沢山できる。


「京介はすごくサッカーがうまいよね」


会話が一旦途切れた所であたしはそう言った。


「ん? あぁ、小学校の頃から続けてるからな」


「1つの事でそのまで続けて来たことって、あたし何もないかも」


そう言うと京介は「そんな事ないだろ」と、軽く言った。


あたしは首を傾げて京介を見る。


過去を振り返ってみても、これと言って続けていることは何もない。


小学校低学年の頃習っていたピアノは3年ほどでやめてしまったし、中学で始めた習字も長くは続かなかった。


元々親に言われて始めた習い事だったから、あたし自分が夢中になれるものでもなかったのだ。


「ご飯を食べたりトイレに行ったりっていう行動は誰でもしてるだろ」


そう言って京介はふざけたように笑った。


「もう! そうじゃなくて!」


「わかってるよ。でも、毎日学校へ行って勉強をするのも続けているものの内に入れていいと、俺は思うけど?」


ふざけた笑顔を消してそう言う京介に、一瞬ドキッとしてしまう。


不意に真剣な顔をされると、返事にも困ってしまう。
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