寄生虫
「それくらい……みんなしてる……」


小さな声でそう言うと、京介があたしの頭をクシャッと撫でて来た。


「それくらいの事でも、できない奴だっているんだ。それに、今からでも何か見つけることはできるだろ」


「できるかな?」


「あぁ。今日のサナギの格好、俺初めて見たけどすごく可愛いと思うし……そういう、いろんな顔を持ってるってことは夢中になれるものを見つけるチャンスでもあると、思うけど……」


そう言いながら京介は少し頬を赤らめた。


女の子を褒める事になれていないからか、それとも相手があたしだからか……。


後者だったら嬉しいな。


なんて、思う。


それからあたしたちはどちらからともなく手を繋いで、目的もなく街を歩いたのだった。
< 75 / 195 >

この作品をシェア

pagetop