寄生虫
そのまま脱衣所へ向かい、タオルを濡らして腕に押し当てた。


少しシミて顔をしかめる。


「どうしたの?」


慌ただしい事に気が付いたバラが脱衣所のドアを開けた。


まだ家にいたようだ。


「サナギが……」


震える声でお母さんが言い、バラがそれに気づいて目を見開いた。


「ちょっと、大丈夫なの!?」


「うん……」


さっきまでなんともなかったけれど、少し落着いた事で体がふらつくのを感じた。


あれだけ出血していれば貧血が起こっていても不思議じゃない。


「パジャマにも血が付いてる。着替えなきゃ」


そう言い、バラは2階へと走って行った。


タオルで腕を押さえたままリビングのソファに座り、大きく深呼吸をした。


これほど血が出ていると言うのに、まだ右腕にはかゆみがあった。


「たぶん、夜中に無意識の内にかいたんだと思う」


「それにしてはひどいわ……」


お母さんはそう言い、そっとタオルを外した。
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