寄生虫
小さな蛾だ。


蛾は蛍光灯の傘の部分に止まり、ジッとして動かない。


もう死んでいるんだろうか?


そう思ったとき、突然蛾は羽をはばたかせて飛んで行った。


見るとバラがハエ叩きを持って身構えている所だった。


「気が付かれた」


バラが小さく呟き、ハエ叩きをテーブルへ置く。


「虫って人間の行動がよく見えてるよね」


あたしはそう言って少し笑った。


ハエ叩きを持った瞬間ハエに逃げられることなんて、しょっちゅうだ。


「本当にね。あんなに小さい目をしてても生き延びるために必死に見てる」


バラはそう言って再びソファに腰を下ろしたのだった。
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