寄生虫
「絶好のタイミングだったかもしれないのに」


真尋の言葉を聞きながらあたしは卵焼きを口に運んだ。


焼けた卵の香りが口いっぱいに広がって、食欲が更に加速する。


続けてウインナーと白飯を口に運ぶと、お腹の中が幸せで満ちていく。


空腹を知ると満腹の幸せを感じる事ができる。


その繰り返しが人間を成長させていく。


なんて事を考えながら、静かになった真尋をチラリと見た。


真尋はただ黙々とお弁当を食べていて、おいしいとか、幸せを感じている様子ではなかった。


真尋からすれば食べ物でお腹が満たされるよりも、あたしの恋話で満たされる方が幸せを感じられるみたいだ。


「……可愛いって言われた」


空腹感が満たされてきて余裕が出て来たあたしは、ボソッとそう言った。
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