永久に抱かれた姫君
それは昼下がりのことだった。
「ねえ、わたし、世界中を旅してみたいの」
絶望する僕を見て、君は言った。眉尻を下げて、口をほころばせていた。__笑っていた。
「いかないで…いかないで」
僕は、涙で顔がぐちゃぐちゃになって言った。
君は行ってしまうのだろうか。僕を置いて、今生の別れの、旅に出てしまうのだろうか。
窓から差し込むおひさまの光が、君の顔を照らした。天からの使いの光に見えて恐ろしく怖かった。