*Kissよりギュッと*
「アホかお前は!この暑い時期になに考えてるんだ?!」

「ごめん、先生」

先生は呆れたように私を見るとため息をついて続けた。

「もうすぐ安田先生も来るからしばらく寝てろ。俺は審判に戻る」

「はーい」

返事をしたものの、よく考えたら球技大会はどうなったんだろう。

…バレーボールは?…バスケは?

それに……龍は?

ベッドの周りのカーテンで、時計が見えない。

「理沙、今何時?」

「今?今は…十時半。バレーはさっき終わって私達が勝ったよ。バスケは、今やってるとこ」

てことは……私、一時間くらい寝てたって事?!

「美夜、無理しなくてイイよ?!バスケは人数多かったから、心配しなくても」

龍……龍は?

寝てなんていられなかった。

行かなきゃ、私。

勢いよく起き上がると私は上靴を履きながら、

「理沙。私はもう平気だって安田先生に伝えといて!バスケ見てくる!」

「待って!これ飲んで!」

由依がスポーツ飲料水を手渡してくれた。

由依……。

「ありがと、由依。それに亜美も理沙も」

「ん。気を付けてね」

「うん!」

龍。龍。

はやる気持ちを何とか抑えながら、私は早足で武術道場へと向かった。
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