*Kissよりギュッと*
確かに陵くんをはじめ、石井くんもあとの二人も爽やかでいい人そうだった。

なのに……ふとした瞬間、龍の顔ばかりが胸に浮かぶ。

手洗い場を背にして、ムッとしたように瞳を光らせた龍。


『……新しい男見つけたいからって俺の忠告聞かないって、どんだけ飢えてんだよ』


思い出すとまた胸が痛い。

……やっぱりひどい。

嫌いだよ、龍なんて。

私は頭を振って脳内から龍を追い出すと、皆と今を楽しむことに集中した。

゚*.。.*゚*.。.*゚


「じゃあね、みんな。また月曜日ね!」

「うん、由依も亜美もバイバイ!」

「じゃあ明日LINEする」

「オッケー!」

散々遊んだ私達は、最後に行った屋内スポーツ場の入り口で解散した。

中谷くんと斎藤くんは塾があるらしく、駅とは反対の通りへと去っていき、陵くんは理沙と一緒に帰っていった。

「料理の写真いっぱい撮ってたね。好きなの?」

二人きりになり、駅へと向かう途中で石井くんが私に言った。

「ううん、そういうんじゃないの」

「そうなんだ。やけに熱心だから料理が趣味なのかなって」
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