*Kissよりギュッと*
……違う、私は……。

龍に…龍に見せたくて思わず撮ってしまったんだ。

ランチビュッフェがあまりにも美味しくて綺麗だったから、龍が見たら喜ぶだろうなとか思って……。

龍のお家は小料理屋だって聞いたけど、もしかしたら少しくらいは洋風の料理も出したりするかもって。

だとしたら龍も興味あるかな、とか……。

やだ、私、変だ。

だって龍とは喧嘩中なのに……。

ひどいことを言われて、傷ついてムカついてるはずなのに。

なのに……なのに、私……。

「……美夜ちゃん?大丈夫?」

急に黙り込んだ私を、石井くんは心配そうに覗き込んだ。

その顔が、当たり前だけど石井くんで、龍じゃなくて……。

……泣きそうになる。

この時の私は、多分龍と喧嘩したままなのが嫌だったんだと思う。

そう。こんなの嫌だ。

だって週明け、このままじゃ話出来ないじゃん。

龍と話せないなんて嫌だ。

「美夜ちゃん……?」

「なんでもないよ。ごめん」

気を遣わせてしまったのを申し訳なく思って、私は石井くんを見上げて笑った。

「じゃあね、石井くん。今日はご馳走さまでした」

「…またね、美夜ちゃん」
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