*Kissよりギュッと*
「ご馳走さまでした」

「お粗末様でした。気を付けて帰ってね」

「駅まで送る」

……え?

な、んで。

……全身が凍りついてしまいそうだった。

なんとお店から出てきたのは眼を疑うような人物だったんだ。

なんで?

なんで?!

入り口には、龍と龍によく似た綺麗な女の人の姿が。

多分龍のお母さんだ。

でも私が硬直した理由はそこじゃない。

どうしてここから元カノ……龍のセンパイ彼女が出てくるの?!

信じられない、なんで?!

龍とセンパイ彼女って、別れたよね?!

それともヨリが戻ったとか?!

眼を見開いて立ち尽くす私の前に、龍とセンパイ彼女が向かい合っている。

その距離は数メートルだ。

お母さんはすぐお店に戻っていき、二人はようやくゆっくりと歩き出した。

二人が真正面を見ればすぐに見つかる。

やだ、逃げなきゃ。

そう思うのに身体がまるで言うことを聞かない。

「……美夜……?」

ああ、最悪だ。

龍の驚いた声に、センパイ彼女がさ迷わせていた視線を私にピタリと合わせる。
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