*Kissよりギュッと*
「だって美夜があの日持ってたハンカチ、確か《スラッシュメタル》の限定品だよね!?だったら忘れないうちに返してもらわないとダメだよ」

《スラッシュメタル》とは、私達女子高生の間で流行っているアクセサリーメーカーだ。

凄くカッコよくてハードなデザインなんだけど、甘い要素が僅かに含まれていて、絶妙なギャップが可愛いんだ。

で、私のそのハンカチは限定500枚のみの販売で、今じゃネットで高額取引されている。

理沙の力説は続いた。

「何かの拍子に破れたり無くなりでもしたら大変!これ以上落ち込まないためにもちゃんと時間を決めて受け取るのよ、いいわね」

「……わかった……」

本当は龍の事で超ブルーだし石井くんに会う気分じゃないんだけど仕方がない。

理沙の言うとおりだし、いつかは返してもらわなきゃいけないもの。

それに、急がせても待たせ過ぎても申し訳ないよね。

私は頷くとすぐ、石井くんに返事を返した。


゚*.。.*゚*.。.*゚

それから一日中、私は龍と眼を合わさずに過ごした。

龍も多分だけど……私を見なかったし接近を避けていた感じだった。

今日は凄く時間の流れが遅い。

ようやくやって来た昼休み、龍はいつの間にか席から消えていた。
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