*Kissよりギュッと*
いつもそうだから、今日も屋上で食べてるんだろうな。

私は……パンでいいや。

食堂でパンを買い、重い足取りで四階を目指す。

そんな私の耳に澄んだ声が飛び込んできた。

「牧瀬さん」

反射的に顔をあげると、階段の踊り場に龍のセンパイ彼女が立っていた。

「話があるの」

「……はい」

そう返事をするしかなかった。

゚*.。.*゚*.。.*゚

渡り廊下へと続く両開きの分厚いガラス扉を、センパイ彼女がゆっくりと押して開けた。

その途端、先輩のスカートが少しだけ翻り、私の髪も乱される。

風から髪を守るように押さえながら数歩先のセンパイ彼女……水沢さんを見ると、彼女はちょうど私を振り返るところだった。

「色々考えたの」

水沢さんは小さく息をついた後、こう切り出した。

「……」

黙って見つめる私に、彼女は続けた。

「あなたあの日、龍君に会いに来たんでしょ?」

「はい」

嘘はつけない。だってもう水沢さんは気付いているもの。

「私もよ。やっぱりもう一度付き合って欲しくて、彼の家に行ったの」

心臓に氷を押し当てられたようにヒヤリとして、私は眼を見開いた。
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