私の存在価値を教えてください
ほんの少しの笑顔
「…えぇっとぶつかってごめん。痛いとこ、無い?」

声、髪型、雰囲気。

ほんの少しだけど、私は覚えてる。

これはやはり、あの人だ。

「…いえ、大丈夫です。すみませんでした」

この人が生きてて良かった。安心した。

「本当にごめんなさい。では、失礼します…」

立ち上がってぺこっとお辞儀をする。

正直、この人と一緒ではいけない様な気がした。

…気のせいかもしれないけれど。

「ちょっと待って」

彼は私の腕を掴んで言った。

「この後、暇?」

「…え…いえ、暇じゃないです」

嘘。本当は暇だ。

私はたぶん、嘘をつくことに慣れてしまったんだろう。

「…嘘だ」

「え?」

彼はニコッと元気に笑った。

「すごく暇そうな顔してる!」

「えぇ!?」
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