その恋。1,037キロメートル。
高校卒業と同時に夢を追いかけ、東京へと上京した私。
勉強したい事は地元の学校でもよかった。
なにも高い学費を払ってまで上京しなくても…。
渋る両親をなんとか説得し、願書締め切りギリギリのところで進学を決めた。
『たまには連絡よこしなさいよ。ご飯…ちゃんと食べるのよ。』
涙ぐみながら話す母の手は震えていた。
それは横にいる父と妹も同じだ。
当たり前のように毎日顔を合わせていた家族が出ていくんだ、手塩をかけて育てた娘がいなくなる事、友達のように仲の良い姉が出て行く事、家族も寂しくてたまらないだろう。
『分かってるよ、ママ。もう時間だし…行くね。』
一人一人と目を合わせ静かに微笑むと、新幹線に飛び乗った。
確かに。地元でも良かったのだ。
でもまだ10代だったこの頃の私は、とにかく刺激が欲しかった。
大都会・東京に行けば、何かが変わる。
そんな期待を胸に新しい場所へと飛び込んだのだ。