【短】スウィートドーナッツ
秋の紅葉が深まるにつれ、私と先生の仲もどんどん深まっていった。
私はいつものように自転車で坂を駆け下り、愛する先生の元へと会いに行く。
今日は、土曜日。
土曜日は絶対に素敵な日になるんだ。
予備校に着き、急いで自転車を止めた。
でも、そこに先生たちの車は、一台も止まっていなかった。
もちろん、沖田先生の車も。
人気のない校舎をしばらくうろうろする。
ドアを引いてみたけれど、鍵がかかっていた。
私は、かばんの中からファイルを取り出し、
この前もらった月予定のプリントに目をうつす。
「あ…… お休みだぁ。」
会いたかったな、先生。
でも、しょうがないね。
しばらく校舎の中を眺めていた。
玄関近くの掲示板には、この前先生が貼っていた、成績優秀者のランキング。
その一番上には、私の名前があった。
この前の数学、一位だったんだよね、私。
『美央、頑張ったな! 俺、嬉しすぎて泣いちゃうよぉ~』
そう言って、私の頭を撫でてくれた先生。
あの先生の嬉しそうな顔が、忘れられない。
先生が喜んでくれるなら、苦手な数学だって、何だって頑張るよ。
そして、家に帰ろうと自転車に鍵を差した時だった。