【短】スウィートドーナッツ
電話ボックスの中で、手紙を開いた。
白い便箋に“美央へ”と、黒いボールペンで書かれていた。
先生の男らしくて、綺麗な字。
この字で、私の名前が書かれることを夢見ていた。
それがこんな形で叶うなんて、悲しいよ……。
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美央へ
これ見ながら、また泣いてるんだろ?
ごめんな。
俺、移動になること、お前と約束した後に知ったんだ。
言うと、泣いて勉強にならないだろ?
だから、どうしても言えなくて。
結果は、聞かなくても分かるよ。
お前なら、絶対100点取る!
俺は、ちゃんと分かってたよ。
だから、ミルクティーはご褒美な。
よく頑張った、美央!!
俺は少し遠くへ行くけど、美央のこと応援してるから。
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手紙の上に、涙がポタポタと落ちた。
先生の字がにじむ。
そして、読み終わったと思ったら、封筒にもう一枚手紙が入っていた。
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最後に……
俺のこと、好きになってくれてありがとう。
美央が可愛くて可愛くて、仕方がなかったよ。
お前にもらった赤ペン、空になっちまったけど、大事にとっとくから!
沖田
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私は、狭い電話ボックスの中で泣き崩れた。
私の膝の上には、先生に渡すことが出来なかったドーナッツが、寂しそうに抱かれていた。