【短】スウィートドーナッツ
学校から帰る時は、いつも遠回りをして、予備校の前を通る。
いつもの大好きな下り坂が、きつい上り坂になってしまうけれど、それでも通る。
先生に会えると期待して。
土曜日以外、先生は他の校舎へ行っているから、会えるはずがない。
それでも、通ってしまう。
とびっきりの笑顔で『みおー!』って、先生が私を呼ぶ声が聞こえる気がして。
ねぇ、先生。
知ってる?
男の人で、私のことを名前で呼ぶ人は、先生が初めてなんだよ。
学校の男の子もみんな、私のことを『早川』って呼ぶ。
それなのに、先生は私と初めて会ったときから、私を下の名前で呼んだ。
数学の問題が何一つ解けない私に、『みお!お前、そんなに俺に構って欲しいのかぁ?』って。
びっくりしたけれど、嬉しくて、嬉しくて。
先生が呼ぶ、私の名前が大好きなんだよ。
先生と話してると、すごく嬉しい。
構ってもらえないと、すごく寂しい。
この気持ちが何なのか、初めは分からなかった。
先生として好き、そう思っていた。
でも、いつも笑顔で私の名前を呼ぶ先生を目で追っているうちに、気付いたんだ。
先生が好きって。
先生に恋しちゃいけないって、誰が決めたの?
人を好きになることほど、素敵なことってないよ。
だから、私は堂々とあなたに恋をする。
会いたい。
もっと会いたい。
毎日会いたい。
私のカレンダーは12月まで、土曜日がハートマーク。