桃色センセイ&狼生徒
一樹の表情が、一瞬にして固まった。
わたしは、呼吸を整えながら、一樹の顔を見ていた。
周りの会話が、いやに聞こえてくる。
女子高生の豪快な笑い声や
駄々をこねる子供の声
店員の注文を聞く声でさえ
耳障りだった。
「も、桃佳…ちゃん?」
一樹が、控えがちに、わたしの顔を覗き込んだ。
「あ、ご…ごめんなさい」
わたしは震える手でティーカップを持ち、紅茶を一口飲んで
口を開いた。
「わたし…昔から男性恐怖症だったわけじゃないの。
中学二年までは、普通に接することが出来た。
中一のときには、彼氏もいた。
でも、中二の…秋…」
わたしの脳裏に
六年前の事件が
蘇ってきた。